3本の長春花のおわり
もう出ようか、と口にして席をたつ。
結局ここのお金を出してくれた彼にお礼を言って、店を出る。
鈴の音を耳に残してパタンと扉を閉じた。
あたしは、仮初めの大人だった。
彼と違って、自然となったわけじゃなかった。
無理やり手を伸ばして、彼にまとわりつくようにして、なんとか掴んだものだった。
それも今じゃ普通の“大人”に近づいてる。
もう、あたしの一部だ。
馬鹿なことはできなくなった。炭酸よりも紅茶を好むようになった。
だから、合わせなくても大丈夫なんだよ。
作りものだったはずなのに、もう殺さなくても無邪気さは出てこない。戻らない、手も伸ばせない。
無くしたあたしがこいつを好きだったという証。