あたしの証~番外編~
「さっき、客帰ったばかりでちぃと散らかってるけど許してね」


きょうさんはそう言いながら、入り口横にある休憩室のような事務所のような小部屋に俺を通してくれた。


「なんか飲む?」


「あ、いえ、お構い無く」


「ふーん、じゃあ、コーヒーでいい?」


「…はい」


きょうさんはポットに入ったコーヒーを入れると、机の上に置いた。


「あー、ミルクとか砂糖勝手に使って」


「…すんません」



……いらないんだけどな、別に。



「…でさ、………えーと名前なんだっけ」


「あ、戸川夏樹です」


「夏樹、うん、なつ。なつがいいな」


「………」


「で、なつ、こないだ貴のとこには入れに行ってたわけ?」


「…はい、そうです」



そう、答えるときょうさんの目が一層鋭くなった気がして一瞬怯む。



「…なつ、まだ18なってないだろ?」


「……………」


ギクリとして、顔をこわばせる。

こんな俺は、とことん人を騙すってことが苦手みたいだ。


それにきょうさんが、ふふっと笑う。
< 142 / 473 >

この作品をシェア

pagetop