あたしの証~番外編~
「…は?」


それはさすがに俺も理解の範疇を超えていた。

だから、間の抜けた声を出す。

でも、至って普通の哲は飄々とした声で続けた。


「だから、家を出て俺と住めばよくない?」


「…どーしてそうなるんだ」


信司が呆れたように呟く。
哲は信司を見ることなく、俺だけを見ると

「どーする?
俺、卒業と同時に一人暮らしするし。
部屋ももう決めてるし、夏樹が来てくれたら正直助かる」

そうやって言った。


「俺…出ていくかもよ?」


それは。
あの復讐を成し遂げるため。


哲はいつもと変わらない笑顔で。

「うん、それでも構わない」


そうやって言ったんだ。

俺は卒業と同時に家を出ることを決めた。


父親はそれについて何も言わなかった。
母親は泣きそうだったけど。



後悔なんてするものか。

後悔するなら。




俺が木下あかりを一度でも好きになったことなのだから。
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