あたしの証~番外編~
好きな女の初めてを貰えるだなんて、きっと男としたら最高に幸せな事だったし。

一生、大事にしようと思えるだろう。


俺からしたら、丁度いい復讐の材料でしかない。



情事を終えた後、あかりは俺の隣ですやすやと寝息をたてて寝ていた。
その姿を見下ろした後、水を飲む為にベッドから静かに抜け出す。


グラスを手に取り、蛇口を捻って水を入れるとそれを一気に飲み干した。
シンクにグラスを置いて、ふっと玄関横に立てかけてある姿見に目がいった。


上半身裸の俺。


そして、その背中には。


あかりの名前と赤黒い…薔薇。





ズキズキと胸が痛む。

助けてと。
何度も心が叫ぶ。


それを知らない振りして。
気付かない振りして。


俺はまたあかりの隣へと潜り込んだ。



温かいはずなのに。



酷く、寒い。
寒い。


明日、起きたらちゃんと笑えますように。


そして、ゆっくりと目を閉じた。
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