あたしの証~番外編~
「最後の賭けなの」

「賭け?」

「あたし、また彫ってもらうんだ」

「彫る?」

「うん、なつきの名前」

「は?」


…何を言ってるんだ?
名前?


あかりはそれがあるから、前へ進めねえってわざわざ自分で“消した”んじゃねえのかよ。


あの時の事を思い出すと、自然と顔が歪む。
どれだけ痛かったのか。
そう思う。


「あたし、もうなつきを忘れることを辞めるの。
あたしが無理矢理なつきを忘れようとしたかられんをたくさん傷付けた。
これから、また同じように忘れようとすればするほど誰かを傷付けるかもしれない。

だから、忘れないの。
なつきがあたしを一生憎むって入れてたように、あたしは一生愛するって入れるの。

自然と他の人を好きになるまではあたしはなつきをずっと。
ずっと。
好きでいるって決めたんだ。

それにこれはあたしの証なの」


あかりの顔に迷いはなさそうだった。
だから、吹っ切れたのか。

そう、決めたから。
< 414 / 473 >

この作品をシェア

pagetop