冷たい君が一途に好き*幼なじみに片想い*(仮)

「あ、ぁー…そうゆーこと。
でも、桃江ちゃん…」




颯くんは桃江の耳に顔を近づけて、何かを話す。




…当然、小声だからあたしにはその内容が聞こえなくて。




ただぼーっとふたりを見ていた…。





「……俺帰んぞ颯」




今まで靴を履きかえていたらしい風麻が、颯くんに向かってそう言った。




…風麻、帰っちゃうのか。




せっかく会えたんだから、一緒に帰りたかったなぁ…なんて。




…あたしを一度も見ることなく、風麻は外に出ようとする。




悲しいな……なんて思っていた時。






「風麻くん? 君は萌加ちゃんと帰るんだけど?」




桃江と話し終わったらしい颯くんが、風麻の背中にそう言った。




「………は?」




颯くんのその言葉に、風麻は立ちどまって振り返る。




「…そーそ! 私たち、これからカラオケ行くから、萌加ひとりだもんね!」





続けて桃江もそんなことを言い出す。





…へ? あれ…?




「桃江…あたしと帰るんじゃ…」




それに、あたしと風麻を帰らせないようにしてなかったっけ…?




「こ、今度一緒に帰ろうね♪
とりあえず、萌加は永井のとこ行って!」



「…うわぁ!?」




あたしの背中を風麻のところまで押されて…




…気がつけば、あたしの目の前には顔を引きつらせた風麻がいた…。
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