MILKCAT
『丁度良かった。――少し付き合ってよ』
無駄に背が高い彼女と、無駄に背が小さい俺と二人で歩くのはあまり好まない。
この前ミルと買い物に行った時なんて『可愛い弟くんだね』なんて八百屋のおばちゃんに言われたんだ。
『大丈夫、大丈夫』
俺の手を取り足を進める彼女。
「はぁ...」
思わずため息が漏れたけれど、五月蝿い程に賑わう街の中では誰にも聞こえなかったであろう。
『――今日はありがと、また明日にでも顔出しに行くね』
「あぁ」
――彼女の家まで送り、足を動かす。
ミルが『甘いものが食べたい』と言ってケーキ屋に行った。
ミルが『可愛いものが見たい』と言って雑貨屋に行った。
ミルが『今日の夕飯買わなくちゃ』と言ってスーパーに行った。
「ふぅ...」
任務を終えた俺の足は怠く重たい。