MILKCAT
――その重たい足を引き摺る様に歩いて再び街へと踏み入れる。
すっかり夜の色に染まった街はネオンが眩しく光る。
昼間とは違って歩いているのはスーツを身に纏うサラリーマンやOL達では無く、少し危ない人達。同じ黒色のスーツでも全然違う様に見える。
『――いっ、てぇなぁ!』
「...、」
少し肩が当たっただけで怒鳴り散らす黒色のスーツの人。
...昼間に見た、就職活動やらだろう黒染した髪の毛がバシバシの若いお兄さんやメタボと言われる様なお腹を持ちてっぺんの髪の毛が寂しいおじさんでも無くて、ピタリとしたオールバックのお兄さん。
「すんません」
『慰謝料払えや!』
まるでドラマのワンシーンだ、なんて頭の隅で考えながらお兄さんに首裏を掴まれ狭い路地裏に引き摺られる。
ズリズリ、靴底が擦れる音と共に引き摺られる振動が足裏に伝わる。
『くそガキが嘗めてんのか』
「謝ったじゃないですか」
壁に押さえ付けられて顔を寄せられる。...少し煙草臭い。
眉根を寄せた俺は自由な足を振り上げる。
『ぐわぁっ、』
鈍い音、声と共に男が地面に倒れる。
ゲシッとお兄さんの背中をグリグリと履き慣れて踵が潰れたローファーで踏む。
「お兄さん、誰にでもそんな態度だったら痛い目遭うよ」
グリグリと踏み付けていた足をふと止める。...既に自分が遭わしてるのか。
『...てめ、何者だ、っ!』
咳き込むお兄さんの綺麗に整えられたオールバックの髪を乱す様に掴み上げて視線を合わせる。