MILKCAT
頬に地面の砂を付けたお兄さんが恐れ、困惑、疑問――....色々な感情が入り混じった表情で俺を見る。
その表情に先程までの威勢は一切無くて俺は男を見下ろしてふんっと鼻で笑う。
「...さぁ?」
"何者だ"なんて聞く前に自ら先に名乗るものじゃないのだろうか、なんて考えながらも首を回して街に戻る。
――夜は夜で昼間とはまた違う活気を取り戻すこの街に眠る時間は来ない。
危ない、治安が悪いと噂の見放された街。
「...寒っ、」
びゅうっと夜風が俺の首筋を撫で密かな寒さに俺はユラユラと妖しく光るネオンを視界に入れながら身を縮こまらせて歩いた。
こんな街で堂々と学生服を身に纏い歩いているのは俺しか居ないだろう。
時にはこんな街でも心配の声を掛けられるし、時には馬鹿にして絡んで来る奴も居る。
「...眠たーい!」
そんな街でも。
居心地良く感じる俺は、可笑しいのだろうか。
遂にそんな感覚までもが俺は可笑しくなってしまったのだろうか...。
冷えた指先を暖める様にズボンのポケットに両手を深く突っ込んでもっと先を目指して歩いた。