雨とピアスと。
「僕は信じてる。」
男はそう言うと腕を緩め、私を見た。
「君もそうだといいな。」
そして綺麗な瞳を細め、優しく微笑んだ。
「わ、わたしはっ」
私が言葉をつなごうとした時
男は唇に人指し指を立て、
この上ない極上な笑みをし、
「またね。」
と、その言葉を最後に雨の中へと消えていった。
私はただ呆然と男の背中を見えなくなるまで見ていた。
そしてなんとも言えない気持ちになぜだか、
瞳から涙が溢れていた。
男が「またね。」と言ったことを思い出した。
「またね。なんて、逢えるかもわからないのに。」
初めて逢った、私と男を繋ぐものなんて何もない。
私は家に向かって歩きだした。