素直じゃなくて何が悪い
午後の部になり、次はメインイベントの1つ、クラス対抗女子リレーだ。
全学年、全クラスの女子の代表4人がもみくちゃになりながら走る姿はどうかと思うが、やはりリレー、しかもクラス対抗は応援にも熱が入る。
ちなみに男子ももう少し後に、同じ形式で催される。
さてリレーもそろそろ始まるかというときに、我がクラス委員長の川田くんが爽やかに本部に登場した、と思ったらいきなり
「矢野ちゃん!!!!!」
え....
矢野って...矢野?私?
「どうしたの?」
何かアナウンスで間違えでもあっただろうか...そう思っていたら
「矢野ちゃん、リレー出て!!」
...はっ??
「え、ちょっと待って、なんで?」
「アンカーの子がさっき捻挫しちゃって...。矢野ちゃんって元陸上部なんでしょ?」
「え、そうなの?」と言ったのは私のとなりに座っていた工藤くんでありまして...。
でも、私が今更...
「たしかにそうだけど、私が引退してからずいぶん経ってるし、今更そんな速く走れるわけ...
「いいよ、矢野咲良出ます。」
と言ったのは私ではなく隣の工藤くん。いや、なんであなたが...と言おうとしたが、川田くんは「ほんとに!?ありがとう!!」と言ってクラスのところに戻ってしまった。
あぁ、どうしよう。
「クラスの子が困ってるんだから、助けてあげなさい。」
「でも私が走ることで、もっと迷惑かかるかも。」
「大丈夫。咲良が本気でやれば誰も文句言わないから。ほれ。」
そんないつもはしない優しい顔で工藤くんにさとされたら、もう後には引けなくなる私。
「...わかった。がんばる...。」
「おうっ!」
と言って、私の髪をくしゃっとする工藤くん。私こうされるの好きだな。
「実況は俺がちゃんとしとくから。」
「不安だな、それ。」
「なんだって?」
そう言って笑わせてくれる彼がスキ。
もちろんクラスのために走るけど、彼が背中を押してくれたんだから、それに応えるために走ろう。