素直じゃなくて何が悪い
「工藤くん。起きてくれます?
というか、起きてください。」
すると工藤くんは、普段教室に現れない私を見て少しながら動揺して、寝癖がついてないか確かめ始めた。
そんな彼を可愛いなんて思ってしまうんだから、私は相当彼のことが好きなんだろう。
「....なに?」
寝ぼけた声で言う彼に、本題をつきつける。
「英語の辞書、持ってない?いきなり授業変更になっちゃって。」
しばらく、うーん...と考えたあとに、ちょっと待ってね、と机の中をゴソゴソし始めた。
すると、数ヶ月前に配られたであろう進路調査や図書館だより等のプリントがくしゃくしゃになって出てくる、あぁなんたるズボラ。
そんなことを思ってると、あっと言って私に辞書を差し出す彼。
「ありがとう、工藤くん。」
「どういたしまして、咲良も放送お疲れ様。」
聞いていてくれたことに、胸が少しだけ高鳴る。
「うん、来週は水曜日だよね、お悩み相
談コーナー。工藤くんも頑張ってね。」
「あー、やだな。咲良も俺があれ苦手なの知ってるでしょ。嫌なこと思い出させないで。」
そういって、いつもの眠たげなポーカーフェイスを眉毛を下げて、少しだけ崩す。そんな微妙な反応が見たくて、わざと言ったなんて、口が裂けても言えない。
「まぁまぁ。じゃあ予鈴鳴ったし行くね。また、放課後。」
そう言えば、彼は手を挙げて応えてくれる。
彼は工藤渚(クドウナギサ)。私の彼氏である。
彼もこの高校の放送部員であり、陸上部のエースでもある。
私と彼は、放送部で知り合った。しかし、私は厳密に言うと中学の頃から彼をしっていたのだけれど。
彼は背も高く、スポーツマンで、頭も悪くなく、陸上で鍛え上げた引き締まった身体は、ほんとに惚れ惚れとするが、モテない。
いや、一部のコアなファンからは絶大な支持を集めているらしいのだが、とにかく彼は無愛想なのだ。何を考えてるか分からないポーカーフェイス。
でも、その彼のポーカーフェイスを崩すことが、私の楽しみだったりもする。