三日月蜜柑
9歳はなれ
イケメンで、
かっこよくて、
優しくて、
好きになるのは、
そうそう時間はかからなかった。
小さいながら、大人の男性に
恋心を抱いた、小学校高学年のころ。
スイミングスクールのコーチ。
”次はそうだなー、
それじゃナオに泳いでもらおう”
えっ、あたし!!
ほかにもっと上手い人いっぱいいるのに。
”こないだ紀本コーチが、
ナオのこと可愛いって言ってたぞー!”
”おいっ!やめろよ~っ”
えっ、コーチが、あたしのこと
可愛いっていってくれてるの?
小さいながら、期待をしてしまっていた。
何度も何度もときめいて
きゅんきゅん苦しくて、
相手は大の大人なのに、、、
バレンタインに、勇気を出して、
日々
頑張って、頑張って作ったマフラーを
手渡しで渡した。
”コーチ!マフラーつけてくれてますか?”
”つけてるよ~!
今日は違うのだけど、いっつもつけてるよ!”
バレンタインのお返しにくれたのは、
スヌーピーのついた
キャンディーのストラップ。
その時は、コーチにもらえるものなら
なんでも嬉しかった。
すぐに鞄につけた。
歩くたびにスヌーピーがゆれている。
今思えば、結局あたしは
どこまでも、小学生で、
あたしはどこまでも、
子供にしか見られてなかった。
コーチが急にいなくなるとき、
あたしは本当に寂しくて、
携帯はもっていなかったが、
アドレスを教えてもらった。
連絡は一回もしたことはないけど、
コーチ、あのときのマフラー、
今も持っていますか?