繋ぎたい女
繋ぎたい女


私の一日の中で一番の楽しみ、ランチタイムがやってきた。

先輩と外でランチをとるのが、当たり前になっていて、今日もいつもの様に、作業を切り終えた先輩を確認すると、足早にデスクに突入した。

「せ、先輩今日は何食べますか?」

「新しく出来た、イタリアン行ってみる?」

先輩は、そう言って立ち上がると、いつもの様に、財布をポケットに突っ込み、ごく普通に隣を歩く。

「はい!」

小さなスケルトンのバッグを、胸に抱えながら、ウキウキ気分で、先輩を見上げる。
すると、前方に仲良く手を繋いでランチに出掛けるカップルの姿が視界に入ってきた。

一日の仕事の中で、唯一、二人きりになれる至福の時間。

手をしっかり握りあった二人の距離は、とても近くて……。



いいなぁ……と、つい、うっとり見とれてしまう。



「どうした?」

「え!?」

「随分、見つめてたから」

「あ、ううん!あの娘が持ってたポーチ可愛いな~って思って!」


羨ましいだなんて、言えやしない!

ましてや、先輩に手を繋いで欲しいだなんて、口がさけても言えない訳で……。

私は、胸のバッグを思わずキュッと握りしめた。





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