繋ぎたい女
私が、先輩を好きになったのは、入社してすぐの事だった。
仕事にまだ慣れなくて、大量なコピーミスを出してしまった私は、シュレッダーをかけに、ふらふらと廊下を歩いていた。
部長に、雷をくらった後で、足取りはおぼつかなかったんだと思う。
「ウキャ……!!」
突然、バランスを崩した私の手からは、大量のミスプリントが惜しみ無くばらまかれ、通路は紙の池状態。
ああ~本当についてない……。
慌ててしゃがみこみ回収していると、ふと、前から携帯で通話中の先輩が歩いて来た。
先輩は、肩で携帯を挟むと、やり取りをしながら、器用な手付きでプリントを拾っていく。
最後の一枚を拾おうとした瞬間。
先輩の指と重なり合うと、ビビビと、身体中を電気が駆け抜けた気がして、思わず手を引っ込めた。
「あ、あの……!!」
お礼を言おうとした私に、先輩は、気にしないでと言うかの様に、片手を軽く上げて見せると、通話を続けながら階段を駆けのぼって行った。
あの時、あの瞬間から、先輩の事が気になって気になって……。
気が付くと、先輩ばかり目で追うようになっていた。
例え、先輩がヤるだけの男だと、社内中噂になっていたとしても。
確かに感じた、指が触れた時の感覚が、彼が運命の人だと、神様が私に知らせてくれた証だと、信じ続けた。