この手を握りたかったから
あの時、ホントはさ.......
一緒に夕食を済ませた後、食器を洗う。

悟(さとる)のアパートに遊びに来た時、私が何となく習慣にしていることだ。



悟は料理が上手。

多分、私なんかより、よっぽど。

私が来ると、悟は必ず腕をふるってくれる。

ならばせめて後片付けくらいはと思ってそうしているうち、食器洗いは私の役割のごとく定着して行った。

だから私にとっては、幸せな時間。



私たちはもうすぐ結婚する。

憧れのジューンブライドだ。

悟は中学の時の同級生。

ホントかどうかわからないけど、悟の言うには、私は悟の初恋の相手だったらしい。



悟とは、成人式の時、同級生たちが集まった飲み会で再会した。

盛り上がってみんなで連絡先を交換し、その後もしばらくは何度か複数の友人たちを交えて会っているうち、だんだんと人数が減って来て..........

そろそろ潮時かと思い始めた時、これからは二人きりで会いたいと、悟の方から告白してくれた。
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