この手を握りたかったから
キッチンのカウンター越しに視線を感じ、水道を止めて目線を上げると、ソファの背もたれに後ろ向きに寄りかかり、ちょこんと顔を出して、こっちを見ている悟と目が合った。

かまって欲しそうにしている子犬みたいで、すごくカワイイ。

目が合った途端、嬉しそうに笑顔に見せる所なんて、まるで尻尾を振って喜んでいるよう。



「洗い終った?」

「うん。」

「じゃあ、こっちおいでよ。」

「うん、今行くね。待ちくたびれちゃった?」

「ううん。そうやってキッチンに立ってる明日香(あすか)、何かイイなぁって思って見てた。」

「奥さんぽくなって来た?」

「うん。」

「ほんと?」

「うん。これから毎日見られると思うと、それだけで幸せな気分になっちゃうもん。」



そう言って、八重歯を見せて微笑む悟が愛しい。

飾り気のない優しい笑顔にホッとして、自然と私の頬も緩んでしまう。
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