この手を握りたかったから
「でさ、そんなことがあったから、中3の時の修学旅行、今度こそ同じ班になりたいって思ってたの。」

「同じ、じゃなかったよね?」

「うん。カッコつけて、同じ班になりたいって言えないでいたら、先に盗られちゃったんだよね。近藤に。」

「あれ? 私、近藤くんと同じ班だったっけ?」

「うん。あいつもお前のこと、好きだったから。」

「へ? うそ?」

「同じ班になれなかっただけでも悔しかったのに、自由行動で見かけた時、あいつがどさくさに紛れてお前の手、引いてたんだよ。それがホント悔しくてさ。」

「全然、憶えてない。」

「そりゃそうだろ。誤解しないでよ。別にストーカーしてた訳じゃないから、ちゃんと憶えてるのは俺もこのことだけなんだけど、どっちも強烈に印象に残ってて、どうしても忘れられないの。」

「ふふふふ........カワイイ話だね。私、幸せ者だな。なんで、その時、悟の気持ちに気がつかなかったんだろう。」

「いいんだよ。だから、今があるんだもん。」
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