華美月夜
頭の上からつま先まで観察していると、胸元に下がった石に目が止まる。

「……癒石、?」

声に出して、石の名を口にしてみると、目の前で目を見開く顔があった。

(まさか)

声だけは届くとか…?

気のせいかもしれないが、目の前で挙動不審に辺りを見回す行動を見ればそう思ってしまう。

(もう、一度だけ)

緊張で震える声を絞り出して、喋る。

「……あ、の」

目が。

合ってる。

「き、こえ…てますか」

高鳴る鼓動が、自分の声を掻き消してそうだ。

目を見開いたまま、ゆっくりと、頷いた。

確かに今、目も合っている。

「ボクは、見、えて…ます、?」

「……は、い」

掠れた声で確かに返事をした。

「ボクは、齋藤…夜珱、というんです。…貴方は?」

「…ボクも齋藤夜珱」

それを聞いて、フっと、力が抜けた。

「やっぱり貴方は“ボク”だったんだ」

力なく、微笑む。“ボク”もつられて優しく笑う。
< 10 / 15 >

この作品をシェア

pagetop