華美月夜

「……気が付いたら、ここにいたんだ」

と、ボクが言う。

「そうか」

と、“ボク”が言う。

何だろうかこの雰囲気は、居心地が悪いというか、空気が張り詰めているというか。

息苦しい。

自分はこうも己に不愛想なのか。いや、自分自身になんと言えばいいのか解らない。

ほんともう、解らないことだらけだ。

「あの、聞きたいことが山とあるのだが…」

「―――手」

「え、あ…はい」

差し出された右手に、左手を伸ばす。

「これからボクがすることを、どうか、許さないでほしい」

その一瞬で、ボクの序章は終わった。

< 13 / 15 >

この作品をシェア

pagetop