華美月夜
「……気が付いたら、ここにいたんだ」
と、ボクが言う。
「そうか」
と、“ボク”が言う。
何だろうかこの雰囲気は、居心地が悪いというか、空気が張り詰めているというか。
息苦しい。
自分はこうも己に不愛想なのか。いや、自分自身になんと言えばいいのか解らない。
ほんともう、解らないことだらけだ。
「あの、聞きたいことが山とあるのだが…」
「―――手」
「え、あ…はい」
差し出された右手に、左手を伸ばす。
「これからボクがすることを、どうか、許さないでほしい」
その一瞬で、ボクの序章は終わった。