華美月夜

領主の子供

「大変だっ夜珱が……」

「宮の若様、落ち着いて下さい。夜珱さまが目覚めてしまわれます」

「雨涼くんの言う通りや。可愛い夜っちゃんの寝顔見れんくなってまう」

「そうだな、珱どのは寝起きが悪いのだ」

「………」

「何で龍どのが若の寝顔知ってんです?」

―――声が。

聞こえ慣れない声が、ボクを眠りの世界から呼び戻した。

「あ、若!」

「…琴乃?」

すぐ近くに大きな茶色の瞳が、ボクの顔を覗き込んでいた。

華美町三番地区三丁目の核琴乃・十六歳。

ボクの幼馴染。

「何で、琴乃が……?」

「…? 若、何言ってるの」

「…え、ここ、何処なんだよ」

目を見開いた。

「この格好は……‼」

もう一人の“ボク”が着ていた服だ。

「それに…」

辺りを見回すと、ボクは六人の男に囲まれていた。

「だ、誰……」

皆の顔色が、一気に変わった。

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