華美月夜
早く帰らなくてはいけないのに。帰りが遅くなったら、両親に怒られる。
そうなるとまた面倒だとは思いつつも、すぐそこに見える灯篭や、提灯を手に歩く人の明かりと軽やかな音楽に心が浮き立ってしまう。
(少し、だけだから……っ)
自分に言い聞かせ、走り出した。
✱ ✱ ✱ ✱ ✱
「……う、わぁ」
思わず声が出た。公園で開催されている祭りは想像以上に賑やかだった。
金魚すくいに射的、カキ氷、ラムネやクレープ。
定番の屋台が並ぶ中、年季の入った古道具や陶器などが並べられていた。
そして、なんといったてこの祭りの醍醐味は、曲芸や手品師などの大道芸人によるショーだ。彼らは通りを行き来して、独自の芸で客を楽しませる。
それが近頃、有名になったとか話題になっているとか。
「さあさあ、お立合いお立合い! 手前ここに取りい出したる石はこれ、過去より伝わる曰くつきの癒石だよ! この石に唱えればあら不思議、痛い傷もあっという間に治っちゃう!」
(お、なんか聞いたことがあるような?)
たしか。
日本が明治であった頃、日本は夢のような技術を手していたかもしれないという、説があった。