華美月夜
実際は、夢見がちな学者の幻想にすぎないと、僕は思ってる。
しかし、パラレルワールドが信じれていて、本当はいまの日本ではなく“別世界の日本”はそんな夢の技術を有している、と語る学者をつい最近テレビで観た気がする。
その学者の手にあったのが、あの石だった。
(偽物だろう。でも、あんな大声で偽物を実演販売をするか普通)
とはいえ、気になりだしたら病まないボクはふらふらと、その怪しい屋台に足を運ばせた。
「お、らっしゃい! 何に興味があるのかね??」
屋台の中心にどっかりと座る、中年の男性を囲うように色とりどり石が並んでいる。そしてその目の前にあるのは一際小さい真っ白な石。
一点の曇りもない白。
他の石には目も暮れず、それに魅入った。
「お客さん、お目が高いねぇ!それ、触っていいよぉ。なんせ、この店、売れないからね!」
(このひと、恥かしげもなく言いよった……‼)
何も言っていないのに、この人はボクが石に目を付けたことに気付いた。
まあ、威勢よくこれを売りつけようと声を張り上げていたのだから、気付くのも当たり前か。
思考を停止して、改めて石に目を落とす。