華美月夜
「それじゃぁ、お言葉に甘えて――」
と手に取ったとき。
光った。
発光した。
淡く輝いた。
藤色の光を瞬かせて。
「……っ!?」
ボクと店主は言葉を失った。
石が。
ボクの手の中に沈むようにして。
消えてしまったから。
「………お客さん、あんた、いったい…?」
拍子抜けた表情をした店主が、真っ青な顔をしてこちらを見ていた。
「普通の、高校、せい…ですけど」
事態が呑み込めず、それだけを言うのが精一杯だった。
背筋から這い上がってくる言い難い不安に、押しつぶされそうな気がして。
「………ごめんなさいっ」
それを言い捨てて走り出した。