華美月夜
興が冷めたように、男は言い捨てて行って閉まった。溜息も交えて。
男を見送った後、少年がふと思い出したかのような仕草をした。
「そうだ。俺、ここの台所に用事があるんだった。と、いうことで。夜珱さま、また後ほど!」
声をかける間もなく彼はその場からいなくなってしまった。
途端に、一人静かに取り残されたそっくりさん。
それを見かねてボクはそっと、近づいた。
―――どう見たって、ボクだ。
髪は頭の上で結われ、まるで侍のように凛々しい。先ほどの喋り方と仕草はボクそのものだ。