老いたる源氏
夕霧5
もうこらえてくれというように老いたる源氏は
大きくうなづきながら、お市がそっと持ってきた
手拭いで涙を拭いています。
「親父殿、ほんとのことを語っていただいて誠にありがとう
ございました。私は心から父上に感謝しております」
「感謝?」
「ええ、柏木は臨終の間際に二つのことを私に頼みました。
一つは父上に不興を買ったからうまくとりなしといてくれ
というものでした」
二人ともやっと普段の顔に戻って話は続きます。
「それはもう叶ったな。二つ目は?」
「それはもう叶っています」
「?」
「落ち葉の君を頼むということでしたから」
二人ははたと顔を見合わせて最後に大きく笑い声をあげました。
それは屈託のない天にも届く大きな笑い声でした。
実は柏木の死後その遺言に忠実に夕霧は落ち葉の君を慰めに
通い続けます。さすがにはじめは全く受け付けられません。
しかしコツコツと誠実にこれが夕霧のいいところです。
ついには出家をと望まれる落ち葉の君を無理やりに連れてきます。
それがもとで雲居の雁は子たちを連れて実家に帰ったりします。
律儀な夕霧は月の半分を雲居の雁あと半分を落ち葉の君という
条件でみんな幸せに暮らしています。
大きくうなづきながら、お市がそっと持ってきた
手拭いで涙を拭いています。
「親父殿、ほんとのことを語っていただいて誠にありがとう
ございました。私は心から父上に感謝しております」
「感謝?」
「ええ、柏木は臨終の間際に二つのことを私に頼みました。
一つは父上に不興を買ったからうまくとりなしといてくれ
というものでした」
二人ともやっと普段の顔に戻って話は続きます。
「それはもう叶ったな。二つ目は?」
「それはもう叶っています」
「?」
「落ち葉の君を頼むということでしたから」
二人ははたと顔を見合わせて最後に大きく笑い声をあげました。
それは屈託のない天にも届く大きな笑い声でした。
実は柏木の死後その遺言に忠実に夕霧は落ち葉の君を慰めに
通い続けます。さすがにはじめは全く受け付けられません。
しかしコツコツと誠実にこれが夕霧のいいところです。
ついには出家をと望まれる落ち葉の君を無理やりに連れてきます。
それがもとで雲居の雁は子たちを連れて実家に帰ったりします。
律儀な夕霧は月の半分を雲居の雁あと半分を落ち葉の君という
条件でみんな幸せに暮らしています。