老いたる源氏
秋好む中宮6
「この間こういうことがありましたよ。雛遊びの時に薫様があまりにおもてになり
ますので匂宮様が腹を立てて姫雛をみんな放り投げました。みんな慌てて取り繕い
ましたが、匂宮さまはたいそう焼きもち焼きでらっしゃいます」
「孫とはいえそこはわしと全く似ておらんな」
「横笛も歌合せも和琴も薫様にはとても及びませぬが独楽、竹馬、蹴鞠はめっぽう
匂宮様はお上手でいらっしゃいます。そういうわけでやんちゃな宮様がいつも薫
様を意識して時には大きな焼きもちを焼かれるようです」
「薫のほうがわしに似ている?」
「ほほほ、すぐに姫にもてようとされるのは孫の匂宮様もおじいさま譲り、薫様の
まめで几帳面なところは源氏のお父様譲り。二人合わせて源氏の君?」
『薫がなんでわしに似ようわけはあるまいに』
と老いたる源氏は思いつつ、
「おなごを独り占めにしようとするのは全くわしの病癖じゃ」
「情熱的であられますよ匂宮様は」
「まめでなければ意味がない」
「それはおそらく夕霧様や薫様」
「融通きかぬ堅物じゃ」
老いたる源氏は薫様の話になるとなぜか不機嫌になられます。
そのことを秋好む中宮は子よりも孫かとお思いのようでした。
ますので匂宮様が腹を立てて姫雛をみんな放り投げました。みんな慌てて取り繕い
ましたが、匂宮さまはたいそう焼きもち焼きでらっしゃいます」
「孫とはいえそこはわしと全く似ておらんな」
「横笛も歌合せも和琴も薫様にはとても及びませぬが独楽、竹馬、蹴鞠はめっぽう
匂宮様はお上手でいらっしゃいます。そういうわけでやんちゃな宮様がいつも薫
様を意識して時には大きな焼きもちを焼かれるようです」
「薫のほうがわしに似ている?」
「ほほほ、すぐに姫にもてようとされるのは孫の匂宮様もおじいさま譲り、薫様の
まめで几帳面なところは源氏のお父様譲り。二人合わせて源氏の君?」
『薫がなんでわしに似ようわけはあるまいに』
と老いたる源氏は思いつつ、
「おなごを独り占めにしようとするのは全くわしの病癖じゃ」
「情熱的であられますよ匂宮様は」
「まめでなければ意味がない」
「それはおそらく夕霧様や薫様」
「融通きかぬ堅物じゃ」
老いたる源氏は薫様の話になるとなぜか不機嫌になられます。
そのことを秋好む中宮は子よりも孫かとお思いのようでした。