老いたる源氏

冥府2

「ぴゆーっ!」
大六天も空を舞ます。

妖怪によるすさまじい空中戦が始まります。
大六天の稲妻が走ります。まともに受けて白鬼はよろめきながら
大六天に電撃波を食らわせます。たじろぐ源氏魔王。

更なる白鬼剣が襲い掛かります。魔王は鋼鉄の腕(かいな)で
白剣を受け魔王剣を白鬼の胸に突き刺します。

「うふはははは!思い知ったか、柏木!」
「何のこれしき。むむむむむむむむ」
柏木白鬼は貫通した魔剣をぐぐぐっと引き抜きます。
傷口はみるみるふさがっていきます。

態勢を立て直し睨みあう二体の鬼。
白鬼柏木がふっと一回り大きくなります。
それに負けまいと魔王源氏が二回り大きくなります。

さらに白鬼が拡大します。ついに二体は天を覆うほどに
でかくなりました。とその時、天空に大声が響き渡りました。

「何をしておいでですか!お二人とも!」
それは優しくも美しい紫の上のお声でした。

二体の鬼はみるみる小さくなって紫の上の手のひらに
載るほど縮こまってしまいました。

紫の上は二人を元の大きさに戻されました。
二人は両手をついて紫の上にひれ伏しています。
紫の上は軽蔑のまなざしで二人を見下ろしています。

しかしその顔はよく見ると能面(こおもて)のようです。
「なぜに殿方はそのように争われになるのですか?」
神妙に二人はうなだれています。ふたりの
額からは汗のしずくがした垂れ落ちています。
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