老いたる源氏
冥府5
「この秘密は夕霧にだけは打ち明けました。夕霧は柏木が死ぬとき
二の姫様をよろしく頼むと言われたそうです」
「わしの二の姫を夕霧に」
「夕霧は柏木の遺言を忠実に守って、今二の姫は夕霧の正室です」
「そうかそれはよかった。源氏おぬしには最後の最後まで苦労を
かけたなあ。これでわしも安心して成仏できる。心から感謝する」
暗闇から朱雀院の気配がすっと消えていきかけます。
そこに遠くから女の声が聞こえてきます。
「朱雀院様ーっ、朱雀院様ーっ!」
朱雀院様と源氏の君が同時に声をあげられました。
「朧月夜!」
お二人顔を見合わせます。
見るからにあでやかな尼姿の朧月夜が現れます。
「これはこれはお二人お揃いで」
ばつが悪そうに院と源氏は顔を見合わせます。
朧月夜はそっと院の御手を取り寄り添っていかれます。
上目づかいに恥じらいながら源氏を見つめて、
「その節はいろいろとお騒がせいたしました。これからも
院とともにあの世で幸せに寄り添ってまいりますので、
決してお邪魔なさらないようにお願いいたします」
老いたる源氏は優しく手をあげて二人を見送られます。
お二人は幸せそうに天の奥へと去っていかれました。
二の姫様をよろしく頼むと言われたそうです」
「わしの二の姫を夕霧に」
「夕霧は柏木の遺言を忠実に守って、今二の姫は夕霧の正室です」
「そうかそれはよかった。源氏おぬしには最後の最後まで苦労を
かけたなあ。これでわしも安心して成仏できる。心から感謝する」
暗闇から朱雀院の気配がすっと消えていきかけます。
そこに遠くから女の声が聞こえてきます。
「朱雀院様ーっ、朱雀院様ーっ!」
朱雀院様と源氏の君が同時に声をあげられました。
「朧月夜!」
お二人顔を見合わせます。
見るからにあでやかな尼姿の朧月夜が現れます。
「これはこれはお二人お揃いで」
ばつが悪そうに院と源氏は顔を見合わせます。
朧月夜はそっと院の御手を取り寄り添っていかれます。
上目づかいに恥じらいながら源氏を見つめて、
「その節はいろいろとお騒がせいたしました。これからも
院とともにあの世で幸せに寄り添ってまいりますので、
決してお邪魔なさらないようにお願いいたします」
老いたる源氏は優しく手をあげて二人を見送られます。
お二人は幸せそうに天の奥へと去っていかれました。