老いたる源氏
匂う宮5
薫の君は妊婦のしるしの腹帯に気が付いて、
それが痛々しかったばっかりに、すんでのところで
思いとどまりになられました。
かたずをのんで見つめていた天空の源氏は、
「何と間抜けな男だ薫は」
柏木も渋々うなづいています。
翌日、久しぶりに突然匂宮がお見えになりました。
中の君は昨日そんなことがあったのでお召し物は
すべてお着換えになっておられます。
心の内も開き直っていつになく匂宮にお甘えになります。
匂宮も御無沙汰を申し訳なく思っています。
ところが薫の君の移り香がたいそう深くしみついています。
「ななな、何としたこと?この移り香は?これはこれは情けない」
中の君は申し開きもできずに泣くばかり。
相手が薫の君なので口惜しいやらおかしいやら、
口ではさんざん言いますが匂宮の心は複雑です。
それが痛々しかったばっかりに、すんでのところで
思いとどまりになられました。
かたずをのんで見つめていた天空の源氏は、
「何と間抜けな男だ薫は」
柏木も渋々うなづいています。
翌日、久しぶりに突然匂宮がお見えになりました。
中の君は昨日そんなことがあったのでお召し物は
すべてお着換えになっておられます。
心の内も開き直っていつになく匂宮にお甘えになります。
匂宮も御無沙汰を申し訳なく思っています。
ところが薫の君の移り香がたいそう深くしみついています。
「ななな、何としたこと?この移り香は?これはこれは情けない」
中の君は申し開きもできずに泣くばかり。
相手が薫の君なので口惜しいやらおかしいやら、
口ではさんざん言いますが匂宮の心は複雑です。