老いたる源氏

浮舟2

「まあこれはいったいどうしたこと!けしからぬではありませんか!」

「名を聞かぬうちは離さないよ」
そう言って匂宮は姫に寄り添いながら横になられました。

「なれなれしい。この方があの匂宮様だ」
と姫はお気づきになられました。

乳母は言いようもなく呆れ果てて、すぐそばに座り宮を
ものすごい形相で睨みつけておいでです。

宮は足の先で乳母をつついたり膝をつねったりしますが
乳母は梃子(てこ)でも動きません。

そのうち女房達の声が聞こえます。
「中の君様がお帰りでーす」

女房の右近がこちらに近づいてきました。
乳母が突然大きな声で叫びます。

「ちょっとすみません!こちらで大変なことが起きていまーす!
私は見張り続けて困り果て身動きもできませーん!」

右近はそれを見て、
「まあなんてみだらなことを。中の君様に言いつけてまいります!」

そこへ宮中から急使が参りました。
「中宮様の胸の発作が起きました匂宮様、至急お帰りを」
と間近まで来て申します。

さすがの宮も姫を屏風の影に突き放し
しぶしぶお戻りになりました。

薫の君はあの姫君が匂宮邸にいることを知りましたが、
どうも母君がほかの隠れ家をお探しのようだと聞きます。

そしてとうとう薫の君はかなり強引にあの姫君を宇治の
新しい建物にお移しなさいました
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