老いたる源氏

浮舟5

「だから言わんこっちゃない。薫が油断するからじゃ」
「いえいえ、非常識な匂宮が悪いのです。人の恋路に
割って入るなんてもってのほか」

「あまりに薫がかしこぶって鼻につくからじゃろうな」
源氏と柏木のお二人は天空で大きく溜息をついておられます。

さて亡骸は見つからないまま入水というと世間体がことさら
悪くなりますので母君を中心にあっという間に火葬が済まされます。

これを後からお聞きになって薫の君も匂う宮も唖然とされました。
詳しく姫の最後を聞き出そうとされますがなかなかわかりません。

とうとうお二人とも心うつろで寝込まれてしまいました。
今更いくら悔やんでも致し方ありません。

お二人が立ち直るには相当の時間がかかりそうです。
薫の君は右近から事の次第を聞きます。

薫の君はもう心の底から打ちのめされてしまわれました。
それでも匂宮はもう気を紛らわすために若い女房などに声をかけて
おいでですが、お顔はいまだ悲しみが隠せません。

薫の君の打ちひしがれたお姿にお慰めの文を渡す気の利いた女御も
いましたが、やはりこの方は時間がかかりそうです。

それでもやがて女一の宮や宮の君にひと時苦しみを紛らわせに
なられるようになり、葬儀も身分の低いものはそのようなものかと
やっと気が落ち着いてこられるようになりました。

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