老いたる源氏
夢の浮橋2
薫の君は浮舟のかたみとして側でつかっていた弟君小君を
連れてお忍びで小野の尼寺へ向かわれます。
小野の里では青々と茂った青葉に埋もれて、夕暮れ蛍の舞い
そうなせせらぎの中に尼君たちの庵があります。
薫の君は駒引き留めて小君に文を手渡します。
小君は姉姫に瓜二つのかわいらしい少年です。
「この文は直に手渡すようにと言われてきました」
取次の尼君は、
「はいはい、あなた様のお尋ねの方はこの奥におられますよ」
「お姉さまでらっしゃいますか?お姉さまですよね?」
「・・・・・・・・」
浮舟は見つめる眼にいっぱいの涙をたたえて、
「お人違いでございましょう。遠い昔にそのようなことが
あったような気もしますが、今では全く思い出せません」
「・・・・」
「どうかご主人様にもそのようにお伝えください。この
お手紙は受け取るわけにはまいりません」
そう言って浮舟は奥へと入ってしまわれました。
落飾された肩までの髪もわびしく、その後ろ姿は
単衣の法衣の中にわずかに震えているようでした。
連れてお忍びで小野の尼寺へ向かわれます。
小野の里では青々と茂った青葉に埋もれて、夕暮れ蛍の舞い
そうなせせらぎの中に尼君たちの庵があります。
薫の君は駒引き留めて小君に文を手渡します。
小君は姉姫に瓜二つのかわいらしい少年です。
「この文は直に手渡すようにと言われてきました」
取次の尼君は、
「はいはい、あなた様のお尋ねの方はこの奥におられますよ」
「お姉さまでらっしゃいますか?お姉さまですよね?」
「・・・・・・・・」
浮舟は見つめる眼にいっぱいの涙をたたえて、
「お人違いでございましょう。遠い昔にそのようなことが
あったような気もしますが、今では全く思い出せません」
「・・・・」
「どうかご主人様にもそのようにお伝えください。この
お手紙は受け取るわけにはまいりません」
そう言って浮舟は奥へと入ってしまわれました。
落飾された肩までの髪もわびしく、その後ろ姿は
単衣の法衣の中にわずかに震えているようでした。