妖精と精霊と人間と
 「くたばれ人間!何故お前等がこの神聖な森に住んでいる!我等の存在を無に近いモノにしたお前達が、何故我等と共存しているんだ!!」
 声の聞こえる方に向かうと、体調二十~三十センチほどの人間の姿をした、高貴な姿の妖精が居た。中性のヨーロッパの宮廷で暮らす貴族のような服に、腰にはエストック(突く機能のみを追及した剣。刀身はしなる事がなく、恐るべき貫通力を誇る。)が繋がっていた。
 「チル・ナ・ノグ。〝永遠の青春の国″に住むと言われるディナ・シー・・・・・何故ここに?」
 ブラウンが目を丸くしてみていると、ラーグウェイはその妖精に近付きながら呟いた。
 「ディアッカ?ディアッカ・ローウェンじゃないのか?!」
 「ラーグウェイ?!・・・何故ここに?」
 「それはこちらのセリフだ。はあ・・・お前は何故、そんなにも人間に関与するんだ。放っておけば危害は無いだろうに・・・」
 「ラーグウェイ!知っているだろう?!千年前の戦いで、俺達精霊は傷ついた人間を助けてやった。なのに・・・どうだ?奴らは恩を返すどころか、我等を裏切ったのだぞ?恩を仇で返してきたのだぞ!?・・・・・・忘れたとは言わせない。ラーグウェイ。お前の姉上を自国に連れて帰り、再び戻った時には言葉もなく、その美しかった羽も、髪も、腕も、足も、顔も、身体も・・・全て人間が調べ尽くして、生きた屍にした。もう・・・あの頃のラージェルじゃなくっていた・・・!それを忘れたのか!!」
 「忘れるわけが無いだろう!姉さんは必死で抵抗していた。人間の所に行く位なら、死んだほうがましだと言って・・・。だが、悔やんでも、姉さんの美しかったモノは帰ってこないんだ!!・・・解ってくれ、ディアッカ。」
 ラーグウェイはそう言って、きつく目を瞑った。まるで、自分の弱さを友に見せない様にするかのようであった。
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