妖精と精霊と人間と
 ラーグウェイの姉は、エルフの住んでいた森の中でも、一番の器量良しと言われていた。ある日、一人の男性がエルフの森に踏み込んだ。妖精の住んでいる所では、そこでの一分が人間の住む世界の一年であるとも言われていた。そのため、その男性はラージェルを見つけると、森から連れ去って行った。ラージェルは抵抗した。必死に抵抗した。しかし、相手は人間の男性だ。適うわけも無い。男性は、ラージェルを自分の村に連れて帰り、無理矢理挙式を上げた。そして、一人の可愛らしい女の子が産まれると、ラージェルを当時で一番の生命化学の研究所へ受け渡した。男性とラージェルの間に産まれた子供は、男性との子供を産み、人間として暮らした。だが、死ぬことも病にかかる事も無かったエルフだが、ハーフであるがゆえに人間の半分も生きないで死んだ。エルフの美しい心には、人間の憎悪が邪魔だったのだ。一方、ラージェルは研究所で散々調べ上げられた後、エルフの森へ続く美しい小川に捨てられた。そして、それをクー・シーと言われる妖精犬が助けて、森へと連れ帰ったのである。森に帰って来た時に、ラージェルは一言呟いた。『復讐してやる。絶対に・・・許すものか。』そして、今度は自分の意思で森を離れて行った。不気味な笑い声を残して。
 「あのー・・・えっと、ディアッカ・・・さん?人間皆が悪いわけじゃないよ。それは解ってよ、ね?」
 「寄るな人間!触るな・・・」
 ディアッカはそう叫ぶと、美香を突き飛ばした。あきらかに人間を毛嫌いしている様であった。
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