妖精と精霊と人間と
リデロは、ギルドの息子だ。リデロとは幼少の頃からの付き合いだ。北の王城・シュベレスに居た頃からの仲だ。昔から、ギルドの仕事を手伝ったり、勉強をサボったり、いたずらをしたり、いつも一緒だった。リデロの双子の妹が死ぬまでは。リデロの双子の妹であるリベロは、リデロについて歩くカワイイ妹だった。どこに行く時も、必ずリデロの後ろをテチテチと歩いていた。ある日、リベロはリデロの真後ろから消えた。そう、死ぬと言うよりも消えたのだ。握っていた手の感触もちゃんとある。しゃべっていた言葉も覚えている。靴のかかとを踏まれた足の感覚も残っている。なのに、真後ろに妹は居なかった。消えていたのだ。一瞬で、そのだだっ広い草原から消えたのだ。最後に聞こえたのは妹のすすり泣く声だけ。アツユと呼ばれる頭はリュウ、身体はトラで馬の尾を持つ神から生まれた怪物に、その身体の全てを食べられてしまったのだ。アツユは妹を食べると兄には目もくれず、遠くの方へと走り去って行った。リデロは悔しかったのだ。大好きな妹が死んでしまったことが。自分一人が生き残ってしまった事が。それからリデロは、リベロと名乗り生きてきた。死んだのは妹ではなく、兄の方だと言った。それを、ノースとギルドにだけ話したのだ。他の誰も知らない、三人だけの秘密となったのだ。