妖精と精霊と人間と
 「出来ないよ!あたしには出来ない・・・罪の無い者を殺すなんて事、あたしには出来ないよ・・・」
 美香がそう呟いて俯くと、ラーグウェイが彼女の頭をそっと撫でた。
 「美香。しかたがないんだ。彼等にとってはこれが最善の策・・・いや、これしかないんだ。解かってやれ。」
 そう言うと、彼は美香の肩をポンッと叩いた。美香はその杖を構えると楽園にみちびく天使・ルミエアを呼んだ。
 「ルミエア・・・彼等、長の無きオーク達に・・・・・安息と、祝福を・・・」
 美香がそう言うと、オーク達はすっと消えた。新たなる楽園へと。死へと繋がるのか、新たなる土地へと繋がるのか、それは術者本人も知らないルミエアの決める世界。ルミエアと当人達が決める場所。
 美香はその場に泣き崩れた。『何が魔法使いだ・・・何が魔女だ・・・誰も、助けられなかった・・・。』そう言って俯いた。北斗を守れなかった事、オーク達をルミエアに任せる事しか出来なかった事、自分の血への恐怖、無力さ。その全てに失望していた。無力感が、彼女を包んでいった。そんな美香に、北斗は歩み寄って優しく微笑んだ。
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