あふれる涙のドロップス
「ああいうカップルいいわね。憧れるわ」
「え、果歩、彼氏いるだろ?」
「フラれちゃったの」
さらりと果歩は言った。
「フラれたって……あのイケメン彼氏に?」
「そ」
紙袋をブランブランさせながら口を尖らせて果歩は言った。
「好きな子他に出来たから、とか言って」
よく考えてみたら、アイツ馬鹿だったわ、と呟く果歩。
「あんたはそんなことしないとは思うけどね」
目を俺から逸らして果歩はそう付け加えた。
あ、と言って、果歩は手に持っていた2つの紙袋のうちの1つを俺に手渡した。
「ケーキのお礼。着てデートするんだよ。じゃ、あたしんちこの近くだから。ばいばい」
一気に言うと、果歩はもう走って家の方に行ってしまった。