あふれる涙のドロップス

 果歩の後ろ姿が、ひどく寂しげに見えた。



 残酷な奴がいるものだ、と、俺は溜め息をついた。他に好きな人ができたとか。



 そんなこと、面と向かってよく言えるな。




 だんだん、腹が立ってきた。果歩の、元彼氏に。




 その時、そんな俺の気持ちとは真逆の、ピロリロリン♪というスマホの着信音が、ズボンのポケットの中で鳴った。





 誰かと思って相手を確認すると、立川だった。





「もしもし」





「あ……葉山?……ごめん、電波悪い。今、南が他校の連中に連れて行かれたのが見えたんだ」





「え……?」





「相手は3人だ。僕一人じゃ太刀打ち出来ねぇ。葉山、土手の近くに居れはいるから。わかるよな」





 途端に、手から力が抜けていった。





「おい、葉山?聞こえてるか?おい?」




 
 耳からスマホが離れていき、立川の声も遠のいって行った。
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