あふれる涙のドロップス

「おい、葉山?聞こえてるか?おい?」





 葉山の声が、だんだん聞こえなくなった。


 最初は電波が悪くて聞こえにくくなったのかと思ったが、そうじゃない。





 
 なぜなら、葉山のいるところの風の音だけ、僕に虚しく、電話越しに聞こえてくるから。




「……っ。僕は先に行ってるからな!」






 少しだけ、苛立ちが言葉に滲んだ気がした。額から、信じられないほど大きな汗の雫が垂れている。





 冷たいけれども、かえって気持ちいい風が、静かに吹く。




 
 リンの荒い吐息が、背中にかかる。







 僕は、目を閉じた。





 このまま眠ってしまいたい。そして、こんな状況から、逃げたしたい。




 そう、なぜか、誰かわからない、誰かに願ってしまった。




  
「海斗____。大丈夫……?海斗?」





 目を開けると、そこには、今にも泣き出しそうな小さな子のような顔をした、君がいたんだ。


 








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