あふれる涙のドロップス
助けなければ______。
唐突に僕の頭に、そう響いた。
男でもなく女でもなく、大人でもなく、子どもでもない、誰かわからない人の声。
でも、何故かそれは、不思議な温かさを感じさせる、魔法のような声だった。
やるんだよ、海斗。
そう、語りかける声の主は、わからない。でも、その声は、背中を押してくれた。
そして、ちょうどその時、タンタンタンという、人が奥に近づいてくる音が聞こえた。
「待たせたな」
そう言ってニヤリと笑う葉山を見ると、安堵の溜息が漏れた。
「じゃ、行くぞ。七瀬はここで待ってろ。南をお前のほうに逃がすから」
葉山はすでに歩きだしていたが、振り向いて、リンにそういった。
リンは、素直に頷くと、僕に口だけで、
『気をつけて』
そう伝えてくれた。