あふれる涙のドロップス

 七瀬さんを見ていると、胸の奥が、ちくりと痛む。



 
 アタシが彼女の胸の中を、ごちゃごちゃにかき混ぜてしまったことがあるんだな、と。



 
 それなのに、彼女は何事もなかったかのように、話してくれる。



 ふんわりと、いつでも微笑んで。




 七瀬さんのこと、妬いちゃうけど、アタシの憧れだな。




 彼女に気付かれないように、そっと見つめる。




 
 その時だった。




 七瀬さんの、悲鳴が聞こえたのは。



 立川くんの、叫び声が聞こえたのは。



 葉山くんの身体から、力が抜けたように、見えたのは。





 
 アタシと七瀬さんは、無我夢中で、葉山くんたちのいる方へと駆け寄った。




 熱気が辺りに立ち込めており、額に汗が浮かび上がる。






「葉山が……葉山が……」






「どうしたの!?」





「息が、止まりそうなんだ」




 
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