あふれる涙のドロップス

 目を閉じて、言った。海斗と、隆と、南さんに、あなたの記憶は残るはず、と。


 しばらく時間が経った。


「お別れよ。……最後のキスをしよ」



 そして、僕たちは、唇を重ね合わせた。



「じゃあね、海斗」



 どんどん薄れてゆく、君の姿。


 君を行かせたくなくて、抱きしめるけれど、だんだん君の感覚が腕から無くなっていった。


 ばいばい。


 凛は、微笑みながら、口だけでそう言った。



 

 君の姿は、もう、なにも見えなくなってしまった。


 ただ。光るきらめきが、残っているだけだった。


 じゃあな。



 僕の目からこぼれ落ちた涙は、君と出会った日に見た、ドロップスのようだった。
 


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