あふれる涙のドロップス
 少し冷えた、十月の終わりの風が頬に当たる。


 
 不意に僕はあるハロウィンの出来事を思い出す。



 あれは、僕が幼稚園年中の頃だった。



 ハロウィンということで、園内を廻って先生たちにお菓子をもらうという企画があった。



 男女ペアになって、園内を廻るのだ。



 僕は、ストレートヘアをツインテールにした女の子とペアになった。



 その子は、頼もしくて、でも、泣き虫で、意地っ張りで、__可愛かった。



 名前は覚えていない。でも、間違いなくそれは僕の初恋だった。



 でも、彼女はその翌日に、病気でどこかの病院に入院した。


 
 どんな病気なのかは聞いていない。もし訊いても、当時の僕には理解できなかっただろうけど。



 その後の彼女のことは、僕は知らない。先生たちは、誰もそのことに触れようとしなかった。

 

 ただ、僕と彼女はそれ以来二度と合っていない。



 たった一日だけの、恋だった。



 彼女の笑顔が記憶にこびりついて、取れない。



 幼稚園児なりに悲しくなって、忘れようとしても、忘れられない。



 いつの間にか僕は、その出来事を心の中で封印していたようだ。



 


 
 
 
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