あふれる涙のドロップス
「そっか…」



 
 
 リンは、地面の方を見ながらポツリと言った。





「あたしにも、好きだった男の子がいたんだよ」





「……へー」




 
 僕の返事は、少しも感情のこもっていないような、ぶっきらぼうなものになった。




「その子、結構鈍臭いの。左右の靴逆に履いてたりしたんだよ。でも、凄くかっこいいの。いつも、あたしのことを、助けてくれたから__」




 リンは、微笑みながら、そう言った。




「お前は__今、そいつがどうしてるか、知ってるのか?」



 
 
 リンは、一瞬僕の目を見てから、




「知ってるわ。今でも鈍臭いの」




 と、笑いを堪えるように言った。




「この前なんか、Tシャツを前後反対に着てたのよ!」




 もう、今度はゲラゲラと爆笑していた。




「…へぇ」



 僕もこの前に似たような…いや、同じことをしたな。



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