あふれる涙のドロップス
 その夜、ふっと体の浮く感覚がして、棺の中に寝かされている自分を見ることが出来た。



 
 幽体離脱、みたいな?




 棺の中で寝ているあたしの顔は、青白くて、とても血の気なんか感じられず、幼いあたしにも、ああ、あたしは死んだんだ、っていうことがはっきりとわかった。



 お葬式では、皆が、泣いていた。




 当時のあたしは、人のお葬式にいったことがなくて。あたしは、自分のお葬式で、初めて『お葬式』というものを知った。




 ____鈴ちゃん……。何で死んじゃったの?



 
 
 杏が、大粒の涙をボロボロと流しながら棺の中のあたしに話しかける。




 ____あーちゃん、あたしならここにいるよ。こっちだよ…。




 
 あたしの声は、皆には届かない。




 ママが泣き崩れる。



 
 やがて皆とのお別れの時が来た。
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