あふれる涙のドロップス
 僕の学校の音楽室は、別校舎にある。




 なんでも昔は、音楽室のある別校舎を、本校舎として使っていたらしい。




 音楽室に行くためには、渡り廊下を通らなければならない。





 一人でさっさと歩いていると、後ろから追い付いてきた葉山が僕にこっそり耳打ちをした。





「今、正面から歩いてきたショートボブの女の子が、南 遥香だ。結構可愛くないか?」




 葉山は南という奴のことを可愛い可愛い言っているが、僕大して可愛いとは思わない。





 リンの方が、100倍可愛い。




 前から歩いてきた南は、葉山の方を向いて、目配せをする。





「ほら、彼女やる気満々だぜ。昼休み、行ってこいよ」





 僕はフンとそっぽを向くと、手に持っていたリコーダーをブンブン振り回した。




「ところで葉山。お前はさっきから南のことを可愛い可愛い言ってるが、お前、南のことが好きなんじゃねえのか?」





 僕は冗談交じりにそう言った。




 すると、元々色の濃い葉山でも、顔を真っ赤にした。




「えッ!」




 ……どういうことだ。まずい事になる予感がする。




 
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