あふれる涙のドロップス
「ねえ……立川くん……」




 
 南さんは、艶々ほっぺを真っ赤にして、僕に言った。





「あたしと……付き合ってください」





 そこまで言うと、南さんは、顔を俯かせた。





 時間が経った。もしかしたら十秒ぐらいだったかもしれないし、一分ぐらいだったかもしれない。





「……ごめん……」





 僕は、かすれた声で、呟くように言った。






「無理、だ。好きな子が、いるんだ」




 

 それだけ言うと、僕は、戸口に向かった。





「なーんだ。あんたこのあたしをフッちゃうような奴だったんだ。もっとマシな奴かと思ってた」





 意地の悪い声が、いきなり背中に突き刺さった。
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