あふれる涙のドロップス
 僕が、リンに声をかけた、その瞬間____。




 リンは、僕に抱きついた。




「リ、リン?」




 慌てて抱きとめると、リンは、顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。




「……どっ、どうせっ、海斗のことだからっ……一人で悩んでっ…一人で慌ててるんでしょ…?もっと……相談してよ!こんなに近くにいるんだから…!」




 僕のシャツは、リンの涙によって、ぐしゃぐしゃになっている。




「海斗のバカーー!」





 リンはすんすんと鼻をすすると、「ホント、バカ……」と呟いた。





「リン」





 僕は、リンを抱き寄せると、ポンポンと、小さい子にお母さんが、『いいこ、いいこ』をするように優しくなでた。





「ありがとな」




 そう一言だけ言うと、リンは、もう一度強く、僕を抱きしめた。




「お願いだから……一人で悩まないで……?」




 リンは、一度僕の体から顔を離して、僕を見上げた。



 僕は小さく頷くと、リンを、強く強く、抱きしめた。

 





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