あふれる涙のドロップス
 僕は、なんでリンが、あの『事件』のことを知っているのかは聞かなかった。




 きっと、リンは、僕のために葉山から話を聞いてくれたんだろう。




 リンは、そういう子だ。




 ____保健室で、リンが泣いた日、僕は最後に、





「ありがとな」




 と、一言だけを伝えた。それで、十分だから___。




 この時には、もう僕は、問題は解決したと思い込んでいた。まだ、何も、変わったというわけではないのに。





 考えの甘い、僕がバカだった。





  *  *  *



 
「立川ー。行くぞー」




 放課後、僕は葉山に呼ばれて体育館に向かう。こう見えても僕は男子バレーボール部。



 葉山は柔道部だが、部活の集合場所までは、とりあえず一緒に行く。




「ちょっと待て」



 僕は鞄に膨大な数の教科書類を鞄の中に詰め込む。














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